秋を迎え、中学受験、高校受験とも受験シーズン到来となりました。

この時期は中学受験であれば親御さん、高校受験ではお子様に不安が出やすくなります。

中学受験では現在の勉強スタイルに成果が出ていないことで、気の急いた親御さんは、もっと目に見える成果を求めて「動く」傾向が強まります。そのピークがこの10〜11月だと言えます。そして、高校受験では焦り出した受験生本人がより良い環境を求めて新たな学習環境を求めがちです。

とにかく受験が近づき、心の不安が大きく顔をのぞかせると、今の状況を少しでも良くしたいという気持ちが強まり、人はつい動きたくなります。では、どうして受験が近づくと不安心理は生まれてくるのか?

不安に感じる強さや度合いは、その人自身の人生体験・経験に基づくのかもしれませんが、特に中学受験の場合、子どもが受験するため、子どもに任せられない気持ちが強い親御さんほど動く傾向が強いと感じます。実際のところ、9月以降に環境を変えて、すぐに成績に良い効果が出るほど受験は甘くはありません。

そして例年10月以降、全ランクの受験生が受験する各塾の公開模試は問題の難易度が上がります。そのため、得点の取りやすい問題は数を減らすことになり、成績が平均を下回る生徒にとって、10月以降の模試成績では子どもの現状学力が把握しにくくなります。実力で得点できる所は一部に限られ、他は記号問題など、本来あるべき解法とはかけ離れた形で答えて、たまたま正解したものが加点されるだけです。

一方の高校受験ですが、秋の段階で生徒が不安を覚える要素の多くは、第一志望とする学校に合格するだけの努力が足りないと自覚している人が大半ではないかと思います。ある意味、勉強に対して真面目な姿勢で臨んでいる生徒だといえます。


中学受験について、親御さんが不安に感じられるのは、子どもの学習状況がスムーズさを欠いているためです。本来、そこには何らかの問題があって、その場で解決を試みるべきなのですが、新たな環境に移してその解決を求めるのは、実のところ、問題を先延ばしにしているだけだということに親は気づくべきです。

未消化な勉強をどうやって進められるのか?ここで親御さんは動きたいところをグッと堪えて、子どもを注意深く見守り、時には一緒に現状をよく分析してみる。このような解決に向けた努力が何より大切です。毎日20〜30分でも子どもと席を並べ、子どもの様子をよく観察することです。こうした親の努力によって問題を乗り越えるヒントが見つかり、子どもも素直に親の助言に理解を示してくれることでしょう。


もし、子どもが立ち止まる度に、親が出てきて手助けしていれば、子どもの問題解決能力は一向に育ちませんし、子ども自身、困った時には誰かが手助けしてくれると思い、他人に依存する癖がついてしまうかもしれません。

勉強を続けていれば、苦難や困難は必ず立ちはだかります。子どもがそれをどう乗り切るか、親は「動かず」じっと見守ることも大切です。

側についていても本人にできるものなら、敢えて手助けしない。子どもの合格ばかりに目が向いてしまい「受験勉強」というベルトコンベアーに乗せるかのような扱いは、中学以降の様々な場面で大きな影を落とすことになります。子どもの力で一つでも多く苦難を乗り越えさせていくのも、中学受験の大きな意義だと思います。